観劇・映画・ドラマ、ボルダリング、シーカヤック、健康法など、好きなこと、実践していること、興味のあることを徒然なるままに書いてみようと思います。
 スポンサーサイト
--年--月--日 (--) | 編集 |
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


 「おのれナポレオン」を見る
2013年05月05日 (日) | 編集 |
ナポレオン 

ブログのアップを2ヵ月近く怠ってしまいました。仕事やプライベートのイベントで忙殺されながらも、お芝居や映画だけはしっかり見ていたのですが、その話は別の日に譲るとして、5月4日(土)14時~、三谷幸喜作「おのれナポレオン」を池袋の芸術劇場で見てきました。GW中のうえ、出演者が豪華なので、追加席や当日席まで満席でした。

 私は友人から「追加で席がでるわよ」と教えてもらって応募したステージ上の席だったので、自分も客席から見られる立場でちょっと緊張してしまいました。それに真横から見るから、全体が見えないのではと心配だったのですが、それは杞憂で、セリフ劇を十分堪能できました。

 三谷さんは最近、歴史を題材にした劇をよく書かれていますが、今回はセントヘレナ島で死去したナポレオンの死の真相に迫るミステリーです。ナポレオンの死因は胃がんというのが定説ですが、、頭髪から高濃度のヒ素が検出されたり、随分たってから掘り起こされた死体がまったく腐敗していなかったことから、以前から毒殺説が根強くあるんですね。

 奇しくも、今日、5月5日はナポレオンの命日です。その日にナポレオンについて書いているなんで、何げに肌寒いものを覚えます。

 さて、登場人物は6人。ナポレオンは野田秀樹が演じ、それを取り巻く5人の中にナポレオンを殺した犯人がいるのではないか・・・ということで、5人が各々ナポレオンと自分との関わりを告白する形で劇は進行していきます。

 5人とは、セントヘレナ島の総督で、ナポレオンを侮辱したり、ひどい扱いをしたことで知られるイギリス人ハドソン・ロウ(内野聖陽)。ちなみに、彼はナポレオンと同い年で、同じ軍人として複雑な感情を抱いていいるんですね。

 2人目はナポレオンの最後を看取り、莫大な遺産を相続したモントロン伯爵(山本耕史)。この人は子供の頃、ナポレオンに家庭教師をしてもらったことがあり、ナポレオンに憧れて軍人になったのに、ナポレオンの記憶にはまったくなくて、離婚歴のある評判の悪い妻と結婚したことで、ナポレオンからパリを追放されたという経歴の持ち主です。

 3人目はモントロンの妻でナポレオンの愛人だったアルヴィーヌ(天海祐希)で、モントロンの計略でセントヘレナ島に随行してから、ナポレオンの愛人になり、ジョセフィーヌという早世した娘まで産んでいます。
 
 4人目はナポレオンの主治医で最後に解剖したアントンマルキ(今井朋彦)。医療ミスで病状を悪化させる薬を飲ませ、死期を早めたのではないかという説があります。

 5人目はコルシカ生まれでナポレオンの侍従ルイ・マルシャン(浅利陽介)。この人は唯一、ナポレオンの忠実なお付きですね。

 告白する相手は、ナポレオンの死後、20年後に5人を訪ねてきた死因に疑問を持つセントヘレナ島出身の医学生。5人のうち出世したのは、ナポレオンの推薦状で会計検査院に勤務している元侍従のルイ・マルシャンのみで、あとの4人はみんな落ちぶれています。

 ハドソン・ロウはナポレオンを早くしなせたことで出世の道を閉ざされ、モントロンは賭博で莫大な遺産を使い果たして一文無しとなり、女にたかるジゴロに。そしてアルヴィーヌはモントロンと離婚して安酒場の女主人に収まり、アントンマルキはパリで町医者を開業していますが、大繁盛とはいきません。

 ルイ・マルシャンを除く4人は、各々ナポレオンを憎むにせよ愛するにせよ、ナポレオンを殺すに足りる動機があることが徐々にわかってきます。ですが、芥川龍之介の「藪の中」のように、箱が幾重にも重なっている感じで、なかなかどこが底なのか見えないのです。そして、最後のドンデン返しがあり、結局、4人が4人とも、名誉の死を遂げたかったナポレオンに「チェスの駒」のように使われていることがわかります。

 そう、この劇ではナポレオンが大好きで得意だったチェスが重要な役割を果たすのです。
ナポレオンは数学が大好きで得意だったのようで、やはり数学の強い人はチェスも強いのですね。

 よくできた劇で面白かったのですが、個人的に違和感が残ったのは、野田秀樹のナポレオンです。まず、セリフがよく聞き取れないところが随所にありました。私はステージ上の数メートル先に役者さんがいる席で見ているわけです。それなのに、セリフが聞きづらいというのは、舞台俳優としての素養にクエスチョンが付いてしまいます。野田さんがすごく肉体の鍛錬を重要視されているのを知っているだけになおさらです。

 プログラムによると、三谷さんは野田さんが出てくれるのなら、ナポレオンがいい、野田さんにぴったりだと思ったそうです。確かに、小柄なところ、エキセントリックなところは、柄にあっているかもしれません。ですが、声にしろ話し方にしろ、敵兵さえ演説で味方につけてしまう天才ナポレオンとはイメージがかけ離れています。デフォルメされているとはいえ、チェスの名人には見えても、軍神には見えないのです。他の5人はみな適役だっただけに、中心に立つ役者が最適と思えないのは残念でした(戯曲家・演出家としての野田秀樹氏について語っているわけではありません)。

 他の役者さんはいずれも上手い方ばかりで、期待を裏切らない出来でした。その中で想定外で面白いと思ったのは、山本耕二のモントロンです。ハドソン・ロウが舞台「モーツァルト」のアントニオ・ サリエリだとすれば、モントロンは中途半端な放蕩者で、グレーな人物なんですね。妻のアルヴィーヌのように本気で「皇帝陛下」を愛しているわけでもなく、遺産目当てでも、自ら手にかけるほど悪人にもなり切れない。没落したナポレオンだけれども、そのナポレオンにも勝ち切れないという自分自身に対する苛立ちのようなものが、よく出ていたように思います。時代劇にヒーローの山本さんは抜群にカッコいいのですが、いろいろな引き出しのある役者さんなのですね。

 歴史劇というのは、わかったつもりで勘違いしていたことがわかるのもいいですね。
お恥ずかしいことですが、私はセントヘレナ島はヨーロッパにある島かと思っていたのですが、実はアフリカ大陸とブラジルの中間にある島で、地図で見るとパリよりケープ・タウンの方が近そうです。あんなところで死ぬというのは、ニューギニアで戦死した日本兵みたいな気分だったのかもと、ちょっとナポレオンに同情してしまいました。もっとも、彼はフランス国民約200万人を戦いで戦死させ、フランスの人口を長らく減少させたと言われていますから、ベッドで死ねただけ運がよかったとも言えるでしょうが。

 それと、日本人は島流しというと、歌舞伎の俊寛みたいにみじめな暮らしを連想しがちですが、ナポレオンは36も部屋のある元副知事の屋敷に大勢の随行者と一緒に住んでいて、毎週土曜日にパーティまでやっていたんですね。そういうところも、ヨーロッパの豊かさを痛感してしまいます。

 最後に、劇とは関係ありませんが、東京芸術劇場のプレイハウスは834席しかなくて、お芝居を見るにはちょうどよい空間だと改めて思いました。内装も中世の劇場みたいで素敵ですしね。いつも2000人位入る劇場で見ることが多いので、オペラグラスのいらない劇場はいいなと思いました。
 建物内にレストランやカフェもたくさんあって、今日は2Fのイタリアン「アル テアトロ」でゆったりランチをいただくことができ、お天気もよかったし、優雅な大満足の1日でした。

スポンサーサイト

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。