観劇・映画・ドラマ、ボルダリング、シーカヤック、健康法など、好きなこと、実践していること、興味のあることを徒然なるままに書いてみようと思います。
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 『ジュリー&ジュリア』 妻の潜在能力を信じる夫の愛に拍手
2011年09月29日 (木) | 編集 |
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 『ジュリー&ジュリア(Julie & Julia)』は2009年にヒットしたアメリカ映画である。
 映画館で予告編を見たときは、正直、何の映画かよくわからず、あまり見に行きたいと思わなかった。ところが、タイトルにもなっているジュリア・チャイルドという女性、アメリカの家庭料理に革命を起こした超有名な料理研究家だと米国育ちの親友から聞き、興味が湧いてDVDで鑑賞してみた。

 映画の主人公は二人。一人は1960年代にフランス料理本『王道のフランス料理“Mastering the Art of French”』がベストセラーとなり、テレビの料理番組“The French Chef”でパーソナリティ務めたジュリア・チャイルド。

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 もう一人は熱烈なジュリアのファンで、40年後にその本にある全レシピ542を1年で再現するブログ“Julie/Julia Project”を綴ったジュリー・パウエル。ジュリーも実在の人物でブログの話も実話である。
 映画はこの二人が新天地で生活をスタートし、料理に出会ったことで成功を手にするまでを同時併行で描いていく。

 ジュリアは国務省に勤務する夫ポールの赴任地パリで自分がやりたいことを模索する奥さんとして登場する。
身長は188センチとビッグだが、食べることと料理が大好きで、おおらかで陽気な性格。誰にでも愛される人物だ。だが、夫婦仲がいいのに子供ができないという悩みも抱えている。

 アメリカにいた頃は高級家具会社でコピーライターをしたり、CIAの前身であるOSS(戦略諜報)でリサーチャーのアシスタントとして働くなど、当時としては珍しいキャリア・ウーマンだったが、パリで専業主婦になるとヒマをもて余し、帽子づくりやカードを習ったりするが長続きしない。ところが、名門料理学校のル コルドン・ブルーに入学し、男ばかりのプロ養成クラスでてフランス料理を習い始めたところ、立ちふさがる壁を次々と突破して、みるみる頭角を現していく。

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 ジュリーは編集者の夫エリックと飼い猫とともにニューヨーク市のクイーンズにやってくる。
住民の50%近くが移民という地区だが、83㎡という広さに魅かれてピザ屋の2階に入居したのだ。
住環境はパリの瀟洒なアパルトマンで暮らすジュリアと対照的である。

 彼女はコールセンターでクレームを受け付ける29歳のダメOL。アシスタントをアゴで使うキャリア・ウーマンの友人たちから「お気の毒に」とバカにされている。小説家を目指していたが作品を完成させたことはなく、何をやっても中途半端だ。

 見かねたエリックがブログをやれと勧め、何を書こうかと考えたとき、実家にずっとおいてあったが、母親が一度も開いたことのなかったジュリアの料理本をテーマにしようと思いつく。フルタイムで働き、帰宅が9時になることもあるのに、毎日料理してレシピを再現するという無謀なプロジェクトに挑もうと決めたのは、30歳を目前に控え、自分を変えたいという強い想いからだった。

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 ジュリアに扮するのは『ディア・ハンター』『ソフィーの選択』『プラダを着た悪魔』などの名女優メリル・ストリープ。一方、ジュリーを演じるのは『魔法にかけられて』『サンシャイン・クリーニング』のエイミー・アダムス。彼女は『ダウト』で、さらに夫ポール役のスタンリー・トゥッチは『プラダを着た悪魔』でメリル・ストリープと共演している。
 
メリル・ストリープの役作りにかける執念は有名だが、この作品ではジュリア・チャイルドになりきれるよう、共演者に自分が最も信頼できる俳優を起用してくれるようプッシュしたのかもしれない。彼女はジュリア役でゴールデングローブ賞 主演女優賞(ミュージカル・コメディ部門)を受賞しているが、YouTubeにアップされた本物のジュリアを見ると、身振りな話し方がそっくりで驚かされる。

 この映画がいいのは、夫婦の在り方がとても素敵に描かれているところだ。特に素晴らしいと思ったのは、ジュリアの夫ポール。
 ポールは公務員だが、詩人・写真家の顔をもつ芸術家でもあり、フランス料理にも造詣が深い教養人だ。
 ふつうなら、そういう人物は妻を見下しそうだが、彼はジュリアの料理する姿が大好きで、妻が素晴らしい能力の持ち主であると信じて温かく見守り、ここぞというところで後押しする。たとえば、「君ならテレビに出られるさ」という具合に。
 
 バレンタインデーのパーティで、中国で友人として食事に行ったとき、ジュリアは「運命の人」だとわかったと招待客の前で語り、
「僕がパンなら、君はバター」とジュリアを見つめながら言う。
ジュリアもポールのことをとても尊敬していて、第二次世界大戦を終結するために、彼がいかに活躍したかを語る。

「想いをきちんと言葉にして伝えること」
「パートナーの目に見えない才能を信じて支え続けること」は
よい夫婦であり続けるために、とても大切なことなのだ。


 このポール役を演じているスタンリー・トゥッチが実に魅力的。
『プラダを着た悪魔』も見ているはずなのに、「こんなにいい俳優がいたのか!」と思うほどだ。
 メリル・ストリープは彼が上手い役者だと知っていて、もっと世に出ればいいのにと思っていたに違いない。
 (リアルな世界では、ポールとジュリアが逆転していたのかも?)

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 この夫妻も、ポールが赤狩りに巻き込まれて冷遇されたり、ジュリアが8年もかけて書いた原稿が最初に持ち込んだ出版社から出版を拒否されたりと、何度か危機的な状況に遭遇するのだが、一人が失意の底にいるときは、もう一人が励まして、いつも二人で乗り越えていく。

 映画には描かれていないが、ポールの退職とともに二人はボストン郊外のケンブリッジに住み、ジュリアが出版する本のイラストを描いたり、写真を担当したりして彼女の仕事をサポートしている。
 余談だが、映画の最後に登場するジュリアの台所(写真)はワシントンDCのスミソニアン博物館に展示されている。たくさんのお鍋がオーナメントになっていて、ジュリアの人柄そのままに、キュートで温かい。

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 ジュリーの夫エリックもジュリーのキャリアに欠かせない存在だ。
途中で料理とブログに熱中する妻に嫌気がさして家を出たりすることもあるけれど、彼女の料理の最大のファンは彼で、いつも実においしそうに料理を食べ、最大限の賛辞を述べてくれる。エリックの存在がなかったら、ジュリーが料理を作る続けることは絶対できなかっただろう。というか、もし私がエリックだったら、胃腸を壊して入院するか、10キロ以上太ってしまうに違いない。料理研究家に必要なのは、グルメで丈夫な胃をもつパートナーのようだ。

 ジュリーはプロジェクトを無事完了したお祝いのパーティで、エリックに
「私がパンなら あなたはバター 私の命よ」と言って感謝の気持ちを伝えている。
 40年前に夫のポールが言ったセリフを現代では妻のジュリーに言わせたところに、脚本家の小粋なはからいを感じる。

監督・脚本のノラ・エフロンは『めぐり逢えたら Sleepless in Seattle 』(1993)や『ユー・ガット・メール You've Got Mail (1998)』を手掛けたヒットメーカーだ。ハリウッドらしい大団円のハッピーエンドは、予想されていたとはいえ、やはり見ている人間を幸せな気分にさせてくれる。

 ところで、この映画、実は「学歴」という観点から見ても興味深いものがある。
ジュリアの母校スミス・カレッジは、アメリカ東部の名門女子大セブン・シスターズの一つであり、『風と共に去りぬ』のマーガレット・ミッチェルなど、錚々たる人材を輩出している。偶然も私の親友もスミスの出身で、日本からわざわざ同窓会にかけつけるほど愛校心が強いのだが、ジュリアも晩年住んでいた家とスタジオをスミスに寄贈したほど母校を愛していた。

 主演のメリル・ストリープは同じくセブン・シスターズのヴァッサー・カレッジの出身。そして、脚本・監督のノラ・エフロンの母校はヒラリー・クリントンも出たウェルズリー・カレッジ。3人とも恵まれた家庭に育ち、名門女子大を出た“お嬢様”だけれど、中高年といわれる年齢になっても、社会にインパクトを与える仕事をしている。“粘り強さ”は女子大の特徴か?

 ちなみに、ジュリー・パウエルはマサチューセッツのアムハースト・カレッジの出身で、この伝統あるリベラルアーツのカレッジは、規模こそ小さいがウィリアムズ、ウェズリアンと並ぶ東部の名門校である。映画ではさえないOLに見えたけど、彼女もジュリア同様、潜在能力の高い人だったわけだ。夫のエリックも「ジュリーなら、きっかけさえつかめば、何かできるハズ!」と常々思ってたんだろうなあ。

 実際のパウエル夫妻はこちら。なかなかお似合いの微笑ましいカップルである。

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